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2026.10.08

入れ歯が入っていれば安心?「口腔機能低下症」とは

 

「入れ歯を入れているので、噛む機能は問題ないと思っていました」

神楽坂の入れ歯専門歯科・大坪デンタルクリニックでも、このようなお話を伺うことがあります。

入れ歯は、失った歯を補い、噛むために大切な治療です。
しかし、入れ歯がお口に入っていることと、その入れ歯で十分に噛めていることは同じではありません。

食べこぼしが増えた、硬いものを避けるようになった、口が乾く、むせることが増えた――。
こうした小さな変化の背景に、「口腔機能低下症」が隠れていることがあります。

今回は、入れ歯をお使いの方にも知っていただきたい口腔機能低下症について解説します。

 

 

口腔機能低下症は「噛む力」だけの問題ではありません

口腔機能低下症とは、加齢や病気、歯の喪失など、さまざまな要因によって、お口の複数の機能が低下している状態です。

お口には、噛むだけでなく、食べ物をまとめる、舌で送り込む、飲み込む、言葉を発するといった多くの役割があります。
そのため、「歯が何本残っているか」や「入れ歯が入っているか」だけでは、お口の機能全体を判断できません。

口腔機能低下症では、次の7項目を検査します。

  1. 口腔衛生状態――舌の汚れや細菌の状態
  2. 口腔乾燥――お口のうるおい
  3. 咬合力――噛む力や残っている歯の状態
  4. 舌口唇運動機能――舌や唇を素早く動かす力
  5. 舌圧――舌で食べ物を押しつぶし、送り込む力
  6. 咀嚼機能――食べ物を細かく噛む力
  7. 嚥下機能――安全に飲み込む力

これら7項目のうち、3項目以上に低下が認められると、口腔機能低下症と診断されます。

 

 

歯を失うことは、口腔機能低下の入口になります

奥歯を失うと、食べ物をすりつぶすための「咬合支持」が減ります。
そのままにしていると、噛む力や咀嚼能力が低下し、硬い肉や繊維質の野菜などを避けるようになることがあります。

ただし、残っている歯の本数だけで機能が決まるわけではありません。

残存歯があっても、歯周病で歯が動いている、左右どちらかでしか噛めない、入れ歯が痛くて使えないといった状態では、十分な咬合支持が得られないことがあります。
反対に、歯を失っていても、適切に調整された入れ歯を日常的に使うことで、噛む機能を補える場合があります。

大切なのは「歯があるか、入れ歯があるか」だけでなく、実際に何を食べられているか、噛む・飲み込む動きが保たれているかを見ることです。

 

 

こんな変化はありませんか?

口腔機能の低下は、ある日突然起こるとは限りません。次のような小さな変化から始まることがあります。

  • 以前より硬いものを食べなくなった
  • 食事に時間がかかるようになった
  • 食べこぼしが増えた
  • 汁物やお茶でむせることがある
  • 錠剤が飲み込みにくい
  • 口が乾きやすい
  • 滑舌が悪くなったように感じる
  • 入れ歯が動く、外れる、痛い・左右どちらか一方で噛んでいる

年齢のせいだと思って見過ごしやすい変化ですが、早めに気づき、原因に応じて対応することが大切です。

>>入れ歯のお悩み

 

入れ歯の調整だけで終わらない場合もあります

入れ歯が痛い、外れる、噛みにくいといった問題は、入れ歯の調整や作り直しによって改善できることがあります。

一方で、口腔機能低下症には、口腔乾燥、舌の力、唇や舌の動き、飲み込む力なども関係します。
そのため、入れ歯だけを調整すれば、すべての機能が回復するとは限りません。

入れ歯の状態とともに、お口全体の機能や食生活を確認し、必要に応じて清掃方法の見直し、口腔機能訓練、食事の工夫、継続的な管理などを組み合わせていきます。

 

 

【入れ歯ドクター大坪のコメント】

入れ歯を使っている方の中には、「痛くないから問題ない」「柔らかいものなら食べられるから大丈夫」と考えている方もいらっしゃいます。

しかし、痛みがなくても、噛みやすい側だけを使っていたり、知らないうちに食べられるものが減っていたりすることがあります。
ご本人が入れ歯に合わせて食べ方を変えているため、機能の低下に気づきにくいのです。

私は、入れ歯の形や適合だけでなく、その入れ歯で実際に噛めているか、食事を楽しめているかまで確認することが大切だと考えています。

「以前より食べにくくなった」「入れ歯はあるけれど、うまく使えていない」と感じる方は、入れ歯をお持ちになってご相談ください。

 

 

入れ歯治療を、お口の機能を見直す機会に

入れ歯は、失った歯の見た目を補うだけのものではありません。
噛む機能を補い、これからの食生活を支えるための治療です。

神楽坂の大坪デンタルクリニックでは、残っている歯、歯ぐきや顎の状態、噛み合わせ、現在の入れ歯、日頃の食事などを確認しながら治療を進めています。

次回は、「入れ歯を持っていること」と「その入れ歯で噛めていること」の違い、そして入れ歯で食べる機能を回復していくために必要な工程についてお話しします。

 

 

参考文献・根拠となる資料

  • 日本老年歯科医学会「口腔機能低下症を知っていますか?」
  • 日本老年歯科医学会「老年歯科医学用語辞典 追加用語:口腔機能低下症」
  • 佐藤裕二・北川昇・七田俊晴「口腔機能低下症の検査と管理」日本補綴歯科学会誌 2020;12(2):144-149. doi:10.2186/ajps.12.144
  • 鳥巣哲朗「歯の喪失ならびに口腔機能低下が高齢者の健康状態に及ぼす影響」日本補綴歯科学会誌 2017;9(4):285-290. doi:10.2186/ajps.9.285

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