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2026.10.19

入れ歯は「作ったら終わり」ではありません――食べる機能を回復するために

「新しい入れ歯を作れば、すぐに何でも噛めるようになりますか?」

入れ歯治療を検討している方から、よくいただくご質問です。

入れ歯は、失った歯を補い、噛む機能を支える大切な治療です。
しかし、完成した入れ歯をお口に入れた時点で、すべての治療が終わるわけではありません。

新しい靴に慣れるまで時間がかかるように、入れ歯にも慣れる期間と調整が必要です。
特に長い間噛みにくい状態が続いていた方は、入れ歯を作ることに加えて、「食べる機能を取り戻す」視点が大切になります。

 

「入れ歯を持っている」と「入れ歯で噛めている」は違います

入れ歯があっても、次のような状態では十分に機能しているとはいえません。

  • 噛むと痛いため、食事のときに外している
  • 話したり食べたりすると入れ歯が動く
  • 左右の噛み合わせが安定しない
  • 硬いものや繊維質の食品を避けている
  • 食べ物を小さく切り、ほとんど噛まずに飲み込んでいる
  • 合わないまま長期間使っている
  • 作ってから一度も調整を受けていない

入れ歯の役割は、歯のない場所を埋めることだけではありません。
上下の歯で安定して噛める状態をつくり、食べ物を細かくして安全に飲み込むまでの一連の動きを支えることにあります。

 

合わない入れ歯を我慢して使わないでください

歯ぐきや顎の骨の形は、時間とともに少しずつ変化します。そのため、作ったときには合っていた入れ歯も、年月がたつと動いたり、特定の場所が当たって痛くなったりすることがあります。

合わない入れ歯を我慢して使うと、痛みを避けるために噛み方が偏り、食べられる食品が減ることがあります。
また、部分入れ歯では、残っている歯に無理な力がかかる場合もあります。

入れ歯安定剤で一時的に落ち着くことがあっても、入れ歯の適合や噛み合わせそのものが改善したわけではありません。
ご自身で削ったり曲げたりせず、歯科医院で状態を確認してください。

 

治療用義歯で「食べる準備」を整えることがあります

長期間合わない入れ歯を使っていた方や、噛み合わせが大きく崩れている方では、すぐに最終的な入れ歯を作るのではなく、「治療用義歯」を使用することがあります。

治療用義歯は、噛み合わせや顎の位置、入れ歯を支える粘膜の状態などを整えながら、どのようにすれば無理なく噛めるかを確認するための入れ歯です。

実際に食事で使い、調整を重ねながら、噛み方やお口の動きを整えていきます。
そこで得られた情報を最終義歯の設計に生かします。

これは単なる「仮の入れ歯」ではなく、食べる機能を回復するためのリハビリテーションの一部です。

 

入れ歯治療は、機能回復のプロセスです

当院では、入れ歯の完成だけを目標にせず、実際に食べられる状態まで確認することを大切にしています。
治療は、おおむね次のような流れで進みます。

  1. 診査――残っている歯、歯ぐきや顎の状態、咬合支持、現在の入れ歯、食生活を確認します。
  2. 治療用義歯による調整――必要な場合は、噛み合わせや顎の位置を整え、食べる練習を行います。
  3. 最終義歯の製作――診査と治療用義歯から得た情報をもとに、生活に合わせて設計します。
  4. 装着後の機能確認――痛みの有無だけでなく、実際に噛めるか、使い続けられるかを確認します。
  5. 継続的な管理――お口の変化に合わせて調整し、残っている歯と入れ歯の両方を管理します。

新しい入れ歯は、装着直後の感覚だけでは評価できません。
調整を重ね、実際の食事に慣れるまで経過を見ることが重要です。

 

入れ歯だけでは補えない機能にも目を向けます

噛みにくさの原因が、すべて入れ歯にあるとは限りません。

舌の力が弱くなっている、お口が乾いて食べ物をまとめにくい、飲み込む力が低下している場合は、入れ歯の調整とあわせて、それぞれの機能に応じた対応が必要です。

また、噛めるようになっても、長年避けてきた食品をすぐに食べられるとは限りません。
食べやすい大きさや調理方法から少しずつ慣らすことも大切です。

入れ歯治療は、入れ歯だけを見る治療ではなく、お口全体の機能と毎日の食生活を一緒に考える治療です。

 

【入れ歯ドクター大坪のコメント】

入れ歯の出来栄えを、見た目や材料だけで判断することはできません。
どれほど精密に作られた入れ歯でも、実際の食事で使えなければ、その方にとって十分な入れ歯とはいえないからです。

私は、診療から入れ歯の製作、装着後の調整まで一貫して関わり、患者さんが何を食べにくいと感じているのかを確認しながら治療を進めています。

特に長く噛めない状態が続いた方には、治療用義歯を使い、噛み方や顎の位置を少しずつ整えていく期間が必要なことがあります。
完成を急ぐより、その方のお口が受け入れられる状態をつくることが、結果として長く使える入れ歯につながると考えています。

入れ歯が痛い、外れる、食べられるものが減ったという方は、「古いから仕方がない」と我慢せず、現在の入れ歯をお持ちになってご相談ください。

 

入れ歯の完成を、治療の終点にしないために

入れ歯は、失った歯を補うだけのものではありません。
噛む機能を回復し、これからの食生活と口腔機能を支えるための治療です。

一方で、入れ歯を作れば、誰でも同じように口腔機能が改善するわけではありません。
残っている歯や顎の状態、舌や唇の力、口腔乾燥、これまでの食生活などによって、回復の程度や必要な期間は異なります。

神楽坂の大坪デンタルクリニックでは、入れ歯の製作だけでなく、治療用義歯を使った「食べるためのリハビリ」、装着後の調整、残っている歯のメインテナンスまで継続して行います。

「入れ歯はあるけれど噛めない」「柔らかいものばかり食べている」「以前のように食事を楽しみたい」という方は、神楽坂の入れ歯専門歯科・大坪デンタルクリニックへご相談ください。

 

参考文献・根拠となる資料

  • 日本老年歯科医学会「口腔機能低下症を知っていますか?」
  • 日本老年歯科医学会「口腔機能低下症 保険診療における検査と診断」
  • 鳥巣哲朗「歯の喪失ならびに口腔機能低下が高齢者の健康状態に及ぼす影響」日本補綴歯科学会誌 2017;9(4):285-290. doi:10.2186/ajps.9.285
  • 冨士岳志ほか「可撤性義歯装着後の咀嚼能力に影響する因子の検討」日本補綴歯科学会誌 2023;15(4):474-482. doi:10.2186/ajps.15.474
  • 日本補綴歯科学会「有床義歯補綴診療のガイドライン(2009改訂版)」

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