お知らせ
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神楽坂で診療をしていると、患者さんからこんな言葉を聞くことがあります。
「歳だから仕方ないですよね」
確かに年齢を重ねれば、体力も視力も少しずつ変化していきます。
お口も例外ではありません。
若い頃と同じように何でも食べられる人もいれば、少しずつ硬いものを避けるようになる人もいます。
しかし、その変化を単なる老化として見過ごしてしまうと、思わぬところで人生に影響が出てくることがあります。
近年、歯科医療の世界では「オーラルフレイル」という言葉が注目されています。
難しい言葉ですが、簡単に言えば「お口の衰えの始まり」です。
実は、この小さな変化が、将来の健康寿命を左右する可能性があることが分かってきました。
食べることは、生きること
私たちは毎日食事をします。
朝食を食べ、昼食をとり、家族や友人と夕食を囲む。
あまりにも当たり前のことなので、その価値を意識する機会は少ないかもしれません。
しかし、もし好きなものが食べられなくなったらどうでしょう。
おせんべいが噛めない。
ステーキを避けるようになる。
漬物やフランスパンが苦手になる。
すると食事の選択肢は少しずつ狭くなります。
そして食べる楽しみも少しずつ減っていきます。
私は長年入れ歯治療に携わっていますが、「噛めなくなる」ということは単に食事が不便になるだけではないと感じています。
外食が億劫になる。
旅行先で名物料理を楽しめなくなる。
人と会う機会が減る。
笑顔が減る。
その影響は、お口の中だけにとどまりません。
人生そのものに広がっていくのです。
「まだ大丈夫」が危ないこともある
オーラルフレイルが厄介なのは、自覚しにくいことです。
突然噛めなくなるわけではありません。
少しずつ進行します。
だからこそ、
「まだ大丈夫」
「そのうち何とかなる」
と考えてしまいます。
しかし、実際にはそうした小さな変化こそが重要です。
硬いものを避ける。
片側ばかりで噛む。
食事の時間が短くなる。
会話中に言葉が出にくくなる。
こうした変化は、お口からのサインかもしれません。
歯科医療が進歩した現在では、歯を失った後の治療だけではなく、機能が低下する前の段階から対策を行うことが大切だと考えられています。
入れ歯は「老化の象徴」ではありません
入れ歯についてお話しすると、
「まだ入れ歯は早いです」
という声を聞くことがあります。
特に女性の患者さんに多い印象です。
しかし私は、入れ歯を年齢の象徴だとは考えていません。
むしろ、人生を楽しむための道具だと考えています。
眼鏡をかけることが恥ずかしいことではないように。
補聴器を使うことが悪いことではないように。
入れ歯もまた、自分らしい生活を続けるための医療です。
実際、よく噛めるようになった患者さんは表情が変わります。
食事の話をされるようになります。
旅行の話をされるようになります。
人によっては数年ぶりにステーキを食べたと喜ばれることもあります。
その笑顔を見るたびに、私は入れ歯の本当の価値を感じています。
人生100年時代だからこそ
50代はまだ若い。
そう感じる方も多いと思います。
実際、昔の50代と今の50代はまったく違います。
しかし人生100年時代と言われる今、50代は折り返し地点に過ぎません。
これから先、30年、40年と食べ続けていくことを考えると、お口の健康はますます重要になります。
健康寿命を延ばすためには、運動も大切です。
栄養も大切です。
人とのつながりも大切です。
そして、そのすべての入り口に「食べること」があります。
しっかり噛めること。
美味しく食べられること。
人と会話を楽しめること。
それは決して贅沢なことではなく、人生を豊かに生きるための土台なのだと思います。
入れ歯ドクター大坪からのコメント
私は入れ歯治療を通じて、多くの患者さんの人生に関わらせていただきました。
その中で感じるのは、入れ歯は歯を補うためだけのものではないということです。
入れ歯は、食べる楽しみを守るためのもの。
人と会う喜びを守るためのもの。
そして、自分らしく年齢を重ねていくためのものです。
神楽坂、飯田橋、市ヶ谷、文京区周辺にお住まいの方で、「最近少し噛みにくくなったな」と感じることがありましたら、それはお口からの小さなメッセージかもしれません。
どうぞ一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
参考文献・エビデンス
近年、日本老年歯科医学会は「オーラルフレイル」を健康と要介護状態の中間段階として位置付け、その予防の重要性を提唱しています。また東京大学高齢社会総合研究機構の研究では、オーラルフレイルを有する高齢者は、将来的な身体的フレイルや要介護状態に移行するリスクが高いことが報告されています。厚生労働省の「健康日本21(第三次)」でも、口腔機能の維持向上は健康寿命延伸の重要な要素として位置付けられています。
【参考文献】
・日本老年歯科医学会「オーラルフレイルに関する基本的考え方」
・東京大学高齢社会総合研究機構 オーラルフレイル研究
・厚生労働省「健康日本21(第三次)」
・日本歯科医師会 オーラルフレイル関連資料